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ファゴデレラ

突発!オーケストラ童話シリーズ
「ファゴデレラ」

むかしむかし、あるところにファゴデレラという、かわいそうなむすめがおりました。

何がかわいそうなのかというと、ひとつは複雑な大人の事情により、いじわるなまま母と二人の姉にこき使われて暮らしていること。

もうひとつは、自分の名前がシンデレラにまったく似ていないことでした。
ごめん。

そんなある日。お城から、一通の手紙が届きました。

お城で開かれる音楽会(踊らないのかよ)へのお誘いです。なんでも、王子様が音色の良いお嫁さんをさがしており、最も綺麗にソロを吹いた女性と結婚したいとか!

突然のニュースに、まま母(オーボエ)と姉たち(フルート、クラ)は色めきたちます。

「お前たち!これは願ってもないチャンスだよ!私もアラフォーになっても再婚しないで我慢してきたかいがあるってもんだよ!」
「キャー!王子様イケメン!超イケメン!
「これで私もセレブの仲間入りね!ヒルズ族と合コンなのね!」

…こいつらホントにヨーロッパの出身なんでしょうか。

***

そんなこんなで、母と姉たちは、音楽会(というかオーディションだな)に出かけていってしまいました。もちろん、ファゴデレラはおいてけぼりです。姉2(クラ)いわく、

「悪いなのび太!この招待状、3人用なんだ!」

ということでした。ダレだのび太って。しかし、綺麗なドレスに優雅なパーティー…やっぱりお城に行きたかったファゴデレラ。掃除しながらひとりため息です。

「はぁ…。わたしもお城で、ごちそう腹いっぱい食べたかったなあ…」

あ、食欲でした。ファゴットは天然です。これだけは譲れません。

***

そこに突然、ドドドーン!という派手な音とともに雷光が閃き、ケムリとともに何者かがあらわれました。そう、魔法使い……

トロンボーン!チューバ!打楽器軍団!

魔法集団でした。しかもやたら体積のある楽器ばかり。そう、彼らは奴隷階層として虐げられた結果、ついに魔法を身につけるに至ったのでした…。

「お嬢さん、我々がきたからには、もう悲しむことはない」
トロンボーンが一歩前に出て言いました。

「はい?」
「力が欲しければ、いつでも貸しましょう。
どうです?お城ごとアイツらやっちゃいませんか
なんかエライぶっそうな連中です。

「い、いや、そういうのはいいです。それより、私はお城の音楽会に行きたいの!そしてローストビーフとカニだけでお腹を満たすの!」
「そんなもん、ホテルのバイキング行けよ!」

***

その後、ひともんちゃくありつつも、なんとかお城へ行くことになったファゴデレラ。彼らが演奏会用の衣装を持ち合わせていたので、着替えることができたのです。魔法使え。

さらに馬車…はありませんでしたが、打楽器軍団が2トントラックで来ていましたので、お城まで乗せてもらえることになりました。魔法を、使えよ。

ブロロロ……。うなりをあげる2トン車。あまりにも夢のない光景。トラックの車内は狭く、とても快適とはいえない。…でも、

「では、しゅっぱーつ!」
牛肉とカニのことしか考えていないファゴデレラには関係ない話なのでした。

***

王子様(チェロ)は困っていました。

大きな体と柔和な笑顔、持ち前のルックス、そして渋みのある低い声で人気のある王子でしたが、今まで女性と付き合ったことはありません。そこでこのような会を開催してみたのです。が。

「は、ハデな娘ばっかりだなあ……」

そうなのです。ヴァイオリン、ホルン、トランペット、それにさっき来たオーボエ、フルート、クラリネット。どれも良い音色なのですが、低音派の王子にはグッときません。

それに、皆なんかやたらと積極的だし、あちらこちらから婚活という言葉が聞こえるし、完全に肉食系女子で、お化粧も気合入りすぎというか……

「なぜ皆、目の周りが真っ黒なのだろう……」

そんな感じで今日はもうお開きにしようかと考えていた王子。しかしそこで、会場のすみでローストビーフをドカ食いしている女性に目が留まります。あきらかに、他の女性とは違う…!いや違うけど。

***

「お嬢さん、あなたの音を聞かせてもらえませんか」
なんと、王子様から直々のお声がけです。会場から嫉妬の目線が降りそそぎます。

「あ、ひょっとコレたへるまで待っへくらさい」
(あ、ちょっとコレ食べるまで待ってください)
堂々と待たせるファゴデレラ。こいつは大物です。

そして、食後にファゴデレラがその音を披露すると、そのトボケながら哀愁ある音色に王子様はすっかり虜になってしまいました。王子様は決めました。

「あ、あなたと、結こ……」
「あっ」

王子様の告白をさえぎるファゴデレラ。魔法使いたちの言葉を思い出したのです。
「明日も仕事あるから、12時にはトラック出しちゃうよ。帰りも乗る気なら、それまでにね。」
時計はすでに11時59分。「まずい!!」

「ごちそうさまでした!」
ファゴデレラは猛ダッシュ。唖然とする王子を背に、お城の階段をいっきに下ります。
そこに残されたのは、彼女が使った、ファゴット用のリード(口にくわえる部分。2枚の木の板を重ねたもの)だけでした……。

***

次の日。

パンパンのお腹をさすりながら、満足げに今日も雑用するファゴデレラ。
しかしなんだか階下が騒がしい。いったいなんだろうとのぞいてみると、なんと王子様が来ているではありませんか!

「このリードの持ち主をさがしているのです」
王子様が説明します。手には、2枚の板をあわせた、あのリード。

そこで、婚活モード全開のまま母と姉たち。なんとかリードを自分の楽器にあてはめようとします。

しかしフルートは論外。クラリネットも、リードは1枚しか使えません。
最後に、2枚の板を使えるオーボエが挑戦しますが……

「ふんぎぎぎぎ!!」
「ちょっ……無理無理!!ムリですって!」
どうやってもサイズが合いません。ファゴットのリードは少し大きいのです。

「そうじ、終わりましたけど」
そこへ登場するファゴデレラ。すると、見覚えのあるリードが。
「あー!それ、探してたんですよ!」
「あっ」「えっ」「ウソ」
まま母や姉たちが驚愕する中、すんなりと収まるリード。

「決まりですね」
微笑む王子。
「あの時の続き……言わせてください」

「結婚、しましょう」

ついにプロポーズ!悔しがるまま母と姉たち。王子の付き人たちは拍手喝采。大団円のエンディング。盛り上がりは最高潮!ファゴデレラの返事は、もちろん……

「それはともかく、お腹すいたのでステーキが食べたいです」


おわり

***

例によって長くなりましたが、書ききれたので満足です。
しかし木管はキャラが立ってるから、つい使っちゃうなあ。

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2009年11月29日 ネタ コメント:4

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わはははは!これは傑作ですね!
特にリードの下り、こんないいパロディは久しぶりに読みました(笑)。

でも、
「自分の名前がシンデレラにまったく似ていない」を読むまで、
これがシンデレラのパロディだと気づきませんでした。
ファゴデレラ、
きっと何かの(私の知らない)怪獣の名前のぱくりだろうと・・・

でも(2)、
チェロって意外とフルートと良く合いませんか?
 ファゴット→似たもの同士
 フルート→私にないものをもってる人
的な。とはいえリードがささる可能性はゼロですが。
輸送にトラックも必要ありませんが。
(フルート小さくてうらやましい)

追伸:先日聞いたサン=サーンスのオルガン付きでは、
トロンボーンが大活躍してましたよ!

2009年11月29日 ククーロ URL 編集


仕事中です…がっ!

こらえきれず、噴いてしまいました!(激笑)
うははははははははははっ!
しばらくファゴデレラ(ウチのオケのファゴ嬢がぴったりですわ)で頭がぐるんぐるんしそう(爆)

2009年11月29日 ひぐま URL 編集


私も仕事中に読んでいて、おかしくてたまらなかったです!
まさに自分のことのようで(食欲のくだりが)。

相当ニヤケていたようで、同僚に「なんか楽しいことでもあったの?」と聞かれてしまうほどでした(苦笑)
と、聞いた同僚はチェロ弾きだったりするので余計おかしかったのですが。

2009年11月30日 ふぁごち URL 編集


>ククーロさん
パロディは書いてる側もなかなか楽しいですよ。どーしても長くなりますが…
やっぱファゴデレラの名前は無理がありましたかねえ。まあどーしてもシンデレラには似ない。
キャスティングもなかなか難しいとこで、今回はまあ、王子様は冒険をしない派、ということでひとつ。

>ひぐまさん
今回はけっこー力作なんで、ご好評で何より!
お仕事中にブログとはうらやましや。ていうか実在するんですかファゴデレラ。

>ふぁごちさん
もー、そんなにニヤついて頂けましたら書き手としても嬉しい限り。どんどん周りに怪しまれていただきたい!
って、やっぱり実在すんですねファゴデレラ。わりと的確なファゴット像だったのかもしれない?

2009年12月01日 たびび URL 編集













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